光と風と時の部屋

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小説(サイコホラー)『平成・酒呑童子』⑦

「平成・酒呑童子」7

「え?そうなんだ。草食系男子と言うか、女性や恋愛に興味を持たない、また持ちたがらない男の子、結婚したくない男の人が、増えたから?」
「そうだ。恋愛や結婚などには、確実な答えがない。正解がないんだ。だから、現代の男、または女でも、恋愛や異性に目を向けもしない、そんな人間が昨今は特に増えている。異性に尽くさなければ愛想を尽かされ、尽くしたら尽くしたで、飽きられて捨てられる。恋愛とは、どっちつかずなものだとな。そう考える男性も増えている。」
「そう。でもそれ、何だか分かる気がするわ。今時の、若い女の子、特に可愛い子や、綺麗な人は、勝手気儘な子が多いかも知れない。でも……。」
「でも?何かな?」
「そんな子ばかりでも、ないと思うわ。香里は、可愛くても引っ込み思案で奥手なだけで、悪い子じゃなかったし……。悠子は、勝手気儘な面もあるけど、根は悪い奴じゃなかった、きっと。美智は、黒縁眼鏡の似合う美人だけど、とても勤勉で真面目だし、他人中心で、見識も広かった。でも、三人とも、もう死んじゃったけど……そして、唯一、生きてる、この私は……私は……。」
「君も、可愛いよ。いや、君は、特に可愛い。そして、いい娘だ。」
「そうかな?でも、…自己防衛で、思わず…あんな事を。」
「誰でも、やけになる事はあるし、誰もが心に闇も持っている。その闇に支配されない、聖なる強い意志が、人間には必要なんだ。」
「聖なる、強い意志?」
「ああ。人の心には、プラスがあれば、マイナスもある。光ある所に、必ず影あり、だ。百パーセントは、この世に有り得ない。百パーセント性格の良い者も、悪い者もいない。百パーセント賢い者も、愚かな者も、百パーセント、健康な者も不健康な者もな、この世には存在しない。最善の努力を尽くしても、百パーセント以上にはなれない。努力が必ず報われるとも限らない。」
「確かに、そうね。」
「そうだ。男らしくしっかり者でいる事、女らしく素直でいる事についてだが、そうすれば恋愛や結婚がうまく行くと言う保証は無い。男らしいお陰でうまく行く場合もあれば、男らしいせいで損をしたりする事もある。後者を、都合の良い人間とも言うがな。努力と言う希望ばかりではなく、生まれ持ったセンスや才能、そして、最後には運とやらも、付き物なのだ。この世の事象は、限りなく広い。絶対とか、確実なんてものは、ないんだ。」
「……。(コクン)」
崇子は、黙って頷いた。
「でも、サカキさん。あなた自身が援助交際をやってるのは?」
「ああ。それはな、多くの小童(こわっぱ)を、試していたんだよ。」
「試してた!?の!?」
「ああ。最近は、どんな子がいるかな、とか。何パーセントが、裏で、ヤクザなどのヤバい人間が絡んでいるか、百の内、美人局(つつもたせ)はどれぐらいか、とかな。」
「美人局にも会ったの?」
「何度か会いかけたよ。三百人以上と援助交際したのでな。だが、返り討ちにしてやった。俺は、身体能力も無限大だからな。地方公務員と言うのは、嘘だ。だが、二十科目以上もあある公務員試験の問題集も、数年分の問題は、丸暗記している。数学や物理は、公式を全て覚え、数的推理や資料解釈等は、あらゆる脳トレをしながらマスターした。」
「凄い、文武両道の妖怪さんね。文武両道の権化でもあるんじゃない?」
「まあ、主には硬派な考えを持つ男達の心によって自然と作られた、不老不死の妖怪だからな。公務員にも、弁護士にも、医者にも、なろうと思えばなれるだろうし、プロのアスリートにもなれる。そしたら、あの天才イチローをもきっと超えてしまうだろう。ケンブリッジ大学ハーバード大学も、この俺なら恐らく、大学院まで主席卒業だ。」
「私の理想の男性像。それをまた遥かに超えてる。」
「だがな、俺とは結婚出来んぞ。人間ではなく、人間の男の姿をした、妖怪だからな。」
「だよね。」
「ところで、腹、減っただろ。鰐の肉だ。食うか?なかなか美味いぞ。」
「ありがと。……もぐもぐ……あら、思ったより美味しい…かも。」
「だろ?」

「成る程。元来の酒呑童子は、そんな妖怪だったんだ。」
「ああ。ハンザムで魅力的でモテモテだった男だったが、言い寄って来た女子(おなご)達を相手にしなかった事で、ある日、その女子達の怨念のガスを浴びて妖怪となり、一人の娘をさらい、大江山に立て籠もった。だが、最後、金太郎こと、坂田金次によって退治されたと言う話だ。それが、昔の、酒呑童子と言うものだ。」
「へえ。」
「ああ。」
「ところで、この島にいる、ペットって?」
「ああ。鰐と、狼三匹と、四匹の鮫達。それだけだ。赤ん坊の頃から、俺が育てたんだ。」
「そうなんだ。凄い。猛獣使いでもあるのね。」
「まあな。だが、ヨーロッパから拾って来た狼は、割とすぐ懐いたんだが、鰐と鮫は、なかなか懐かせるには苦労したよ。実はな、鮫や鰐に、俺も一度、喰われてるんだ。でも俺は、死んでもすぐ生き返ってしまうから、排泄された後に、ムクムクと元通りの姿に戻り、再び彼らの所へ行って、また懐くように、距離を取りながら何度も仕込んだ。」
「そうだったのね。鮫や鰐は、なかなか人間には懐かないイメージだけど。」
「基本は、懐かないよ。滅多にね。あれでも、鰐は爬虫類の中では一番賢いんだ。鮫も、あれはホオジロザメなんだが、魚介類の中では、とても強くて、そして、知能も高いからな。イルカやシャチには、賢さでは少し劣るかも知れんが。」
「イルカやシャチって、人間は食べないんだよね。」
「ああ。シャチは、噛み付くだけだが、怒らせると狂暴だから、かまれると出血多量で死ぬ者もいる。イルカは、魚介類ではなく、水辺の哺乳類だ。水族館でよくショーに使われてるだろ。賢くて、仕込めば芸もするのは、イルカだな。」
「うん。小さい時、イルカショーなら、見に行ったわ。」

「もう、いつの間にか夕方になっちゃったね。お母さんとお父さん、弟は、何て言うだろう?」
「俺に誘拐された、監禁されたとでも言っていいぞ。刑務所に入るのも、俺は全然怖くないからな。死刑になっても、生き返るしな。ところでだ、イカダなら、あるぞ。向こうの海岸に、もう一つ、小さな洞穴があるから、そこにしまってあるんだ。帰りたければ、帰るといい。良ければ、送るぞ。どうだ?」
「ありがと。でももうちょっとここにいたい、かな、なんて。」
と崇子はまた笑った。
「そうか。」

サカキと崇子は、ボートを漕ぎながら話している。
「ねえ、サカキ。世界の終わりが来ても、生き続けるの?」
「かもな。いや、分からん。本当に死ねる方法がはっきりしていないんだが、した事ない事が、ある。」
「それって、何?」
「それは…な…。」
「それは?」
「そうだ。俺は、童貞なんだ。した事ないのは、セックス、それと、結婚だ。」
「そうなの?」
「ああ。いつも、セックスしようとしたその手前で、俺は姿を消すか、または、わざと娘っ子に殺されてみたり、いつもそれだったんだよ。」
「じゃあ……。」
「ああ。処女とでもセックスすれば。永遠に、死ねるかもな。」

「じゃあ、ここでね。送ってくれて、ありがとう。」
「いやいや。会いたければ、いつでも連絡してくれ。いい男が見付からなかったなら、その時は、俺が、いつでも待ってる。」
「うん。じゃあ、きっと、分かり会える素敵な人を、また、探して、探してみるわ。でも、永遠の眠りに付きたくなったら、いつでも言ってね。」
「ああ。」
「私がお婆さんになる頃には、あなたが、タイムマシンを開発してるかも?いや、もしくは、あなたは、もう既にいなくなってるかも知れない。」
「そうだな。その二択になるかも知れんな。」
「じゃあね。サカキ。」
「ああ。その時は、若返る薬も、開発してるかも知れぬ。タイムマシンを使えば、死んだ者も、取り戻す事は出来るかも知れぬが、それには他の者に代償が起こる場合もありそうだから、じっくり考えさせてくれ。」
「うん!それじゃ、さよなら!サカキ。」
「ああ、さよならだ。崇子。」
 帰路につく崇子を、サカキは暫く見送っていた。