光と風と時の部屋

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学習&ホラー小説「歴史教師と時空の落とし穴」2

「歴史教師と時空の落とし穴」2

「はい。四世紀頃、大和政権は各地に“屯倉(みやけ)”を設けて直接管理し、“田部(たべ)”が労役に従事しましたね。これは、大和地方を中心に、王、それは大王(おおきみ)→天皇(すめらみこと)と呼ばれた首長と豪族達が連合して統一した政権です。……云々……。」
教科書を見ながら暦はじっくりと説明を行なう。
「大和政権の経済的・軍事的基盤を築いた制度を、『部民制度』と言います。……大和政権下で、職能部民の事を品部(ともべ)と言い、それを統率した首長は伴造(とものみやつこ)と呼ばれました。」
「ええと、はい。この行から、川本君読んでくれる?」
「はい。ええと。……五世紀、中国の南朝朝貢した五王で、『宋書倭国伝などに”倭の五王”について記されている。……朝鮮の高句(こうく)麗(り)の南下に対抗するため高い称号を得ようとし、また大陸文化の摂取に努めた。」
「はい、結構です。じゃあ次の段落を、森本さん、御願いね。…………。」
「は、はい…………。」

こうして六時間目を終えた後、終業のチャイムが鳴り、この教室ではホームルームが終わる。生徒達はぞろぞろと帰って行った。
「先生、さようならああ。じゃあ俺、部活行って来るねーー。」
「はい、さようなら。日本史以外の宿題も忘れずにね。山岡君。帰って寝ちゃ駄目よ。」
「分かってるよ。俺はこれでも、文武両道なんだから。」
「ふふ。そうね。あ、川本君、この前みたいに宿題忘れて来ちゃ駄目よ。」
「分かってます、先生。ではさよなら。」
こう言って川本は帰って行く。山岡の方は、部活に行った。
 山岡は、バスケと日本史が得意で、その他の教科の成績も平均より上で、大体どれも悪くは無かった。ただ体育と日本史は、いつも上の上だった。これからもこの調子でどんどん頑張れば、二流もしくは、ギリギリ一流の私立文系の大学は、きっと入れるだろうと暦からも言われている。引き換え、川本の方は、帰宅部で遊び好きだった。勉強もスポーツも得意ではなく、昨年まではよく街中ではナンパをしていた事もある。でもイケメンで優しく話が上手く、趣味は釣りや料理である為、釣りや料理の腕もなかなかのものなので、女子生徒からは結構モテている。山岡ほどモテている訳ではないが、彼もよく女子を喫茶店やボーリング、釣り、キャンプ等に誘って遊びに行ったりしていた。川本の家は、その名前の通り、大きな中流の川沿いに建っており、夏や秋になると、そこでよく川魚や川蟹を捕っては、料理して友達に御馳走したりしている。山岡はモテるが、川本みたいな軟派ではないので、そう頻繁に女子と遊びに行く事はしなかった。ただ部活の連中とはよく遊びに行くのだ。

 部活の生徒も全員帰った夜九時頃だった。何と、まだ暦は学校に残っていた。
「ああ~あ。やっと終わった、と。もう~~、連休明け早々、残業なんてついてないなあ。でもこんな時もあるわね。仕方無いわ。さて。片付けて帰ろうかしら。家が近場で良かった。ふわああ~~ぁ……。」
暦は手伸びしながら大きな欠伸(あくび)をした。オマケには背伸びもしたので、パンプスが軽く脱げて汗で湿った踵(かかと)だけ浮いた。
「あ、柊先生。御疲れ様です。もう帰られますか?」
ここに出て来たのは、柳井と言う、二十八歳の男性教諭だった。眼鏡が似合う七三分けのハンサムな、理科専攻の教師である。昨年こちらに転勤して来た。暦は、この真面目で優しく凛々しい柳井に、秘かに思いを寄せているのだ。
「あ、柳井先生。まだいらっしゃったんですね。私、後五分ぐらいここで一服して帰りますから、どうぞ先に帰っていて下さい。鍵、私が閉めておきますから。御疲れ様です。」
「いいんですか?じゃあ、終電急ぐんで、帰らせて頂きますね。柊先生、無理せず身体を休めましょう。私も連休明けですと私も心身共に重くて重くて……。では御先に失礼致します。」
こう言って頭を下げると、柳井は帰って行った。
「気を付けて下さいね。」
と暦は微かに顔を紅潮させていた。
 少しの間、教卓の上に顔を伏せていた暦は、やがて一服を終えたと思うと顔を上げて、棚の上に載せてあったショルダーバッグを取り、帰る支度をした。
「さて。帰ろうか。」
三年生の教室だけに、ここは校舎の三階だった。それもA組なので一番奥の方だ。疲れた徐(おもむろ)な足取りで、暦は階段へと向かう。
そして階段をゆっくり、コツコツと降り始める。パンプスの音のみが響くように思われる長い階段……。夜の学校内は静寂に包まれている。こうも一人だと、明朗快活な暦でも、がくがくと身体が震えてしまう。こんな時は別に出ないと分かっていても、矢張り出そうに思えてしまうのだろう、人間は一人になると皆臆病になるものだと暦は思った。
早く帰りたいので、階段を早足で降りて行く…。降りて行く…。

「いやあ!どうなってるのっ!?」
何と、もう同じ階段を降り始めて十分以上経つ。いつの間にか下は真っ暗闇で、十五段ぐらいで見える筈の、下の階が全く見えない。それでも暦は走るように階段を降り続けた。もう二百段以上は降りているだろう。脚の方はクタクタになっていた。
 その時だった。
「な、何?渦潮みたい……何だか分からないけど、出口なの……?きゃっ…………。」
 いつの間にやら現れていた渦潮は、そのまま闇の中に青白く浮かび上がっていた。
 暦は、そのまま渦の中へと吸い込まれたのだった。

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