光と風と時の部屋

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小説(サイコホラー)『平成・酒呑童子』⑥

「平成・酒呑童子」6

「うう……ん。え?ここ、どこ……?」
一番に目を覚ましたのは、崇子だった。
周りを見渡すと、ここはどこかの森の中のようだった。美智達、三人は、まだ眠っていた。
「みんな!起きて!」
崇子が大声で言うと、美智も、悠子も起きて、そして、香里も目を覚ました。
「崇子。どうしたの?」
美智が問うと、
「私達、どうなったのかな?」
「えっ?そう言えば、私達、カラオケを出たわよね…あれから記憶が…ないわ。」
と美智は右手を顎下に当てながら考える。
「ねえ!ここ、どこよ!」
「……。」
悠子は焦ったように声を出し、香里は、周りをキョロキョロ見ながら黙っている。
「何が起こったの?!」
「さあ…もしや…?!」
と、美智が言った時だった。

「やあ、君達。お目覚めかな?」

「ええ?!」
 やはり、あの男だった。林の奥から姿を現したのは、あの時、死んで、皆で埋めた筈の、あの男だった。
「そんな…。」
「やっぱり!」
「あの…。」
崇子が絶句し、悠子、美智、香里も、続いて声を詰まらせた。
「あなたは!あの時の!」
と崇子。
「そうそう。そうだった。ここはね、一度、僕のお墓になった場所だよ。と言うか、離れ小島だけどね。そう、あの時、死体になった時の僕をわざわざ埋めに来てくれた、あの無人島が、ここだよ。後、申し遅れたけど、俺の名前は、サカキ、と言うんだ。うん。」
「あなた、死んだ筈じゃ……。」
「そう思っただろ?でも僕は、ただの人間じゃないからさ。生き返ったんだよ。目が覚めてすぐは、埋められてたから、真っ暗だった。土を掻いて出て来るのに少し苦労したけどね。」
「あの、それより、私達、これから、どうなるの?」
「そだね。考えてもご覧よ。自分達のした事について、胸に手を当てて、じっくりと、ね。因果応報だよね。君達四人で、一度は僕を殺したようなものだからね。」
「わざとじゃないの!だから、許して!お願い!」
と崇子は両手を揃えて言う。半泣き状態だ。
「わざと、じゃない?でも、皆で僕を焼いて埋めたんだから、最終的には、もう、わざと、だよね?違う?」
「えっと……。」
「ここは、僕の私有地のようなものだからね。逃げようとしても、無駄だよ。あの君たちを運んだイカダも、もう処分したから、ないよ。そう、つまり、逃げられないから。」
「そんな!」
「待ってよ!」
「酷いじゃない!」
「ぐすん…」
と、香里だけは泣き出してしまった。
「最初に酷い事をしたのは、どっちかな。僕みたいな者でまだ良かったけど、他の人間だったら。君達、とっくに、殺人、いや、過失致死と死体遺棄で捕まって、かなりの重罪だよ?まあ、この島では日本国憲法は無いし、僕だけが法律であり、政治そのものだからね。」
「みんな!これ。私のせいよ!」
「やあ、よく分かったね。逃げても無駄だけど、まあ逃げていいよ。そうだ。三十秒、一分、待ってあげるよ。じゃあ、数えるね。一、二……。」
「どうしよう!」
「とにかく、逃げてみましょう!」
と美智は言う。
「うん!」
と三人は頷き、必死になって走り出した。

「この島には、俺の飼い慣らしてる、ペット達がいるからねーーーっ!」
遠くなった男の声が向こうから聞こえた。

「みんな、離れ離れに逃げようよ!誰かが助かるかも知れないから!」
「そうね!イカダ、あるかも知れないから手分けして探しましょう!」
「うん!」
「……。」
 四人は四手に分かれて走り続けた。

「はあ、はあ、はあ……。」
真っすぐ走り続けているのは、崇子だった。
「ごめんね、みんな。私のせいで……。」
聞こえないと分かっていながらも、崇子は呟く。

「ぜえ!ぜえ!ぜえ!着替えもしてないから、暑苦しいし汗臭い。それから、息苦しい…。」
と、悠子。
「あ。川だ。結構、広いわね。何もいないかな。まさか、ピラニアとか?いないわよね、多分。アマゾン川じゃあるまいし。でも、渡らなくちゃ。」
そして、悠子は、おそるおそる、靴もルーズソックスも脱がず、川へと入る。そして向こう岸を目指して歩いた。
「やだ。結構不快な。膝より上まで、浸かっちゃった。私の臭い靴や、臭い靴下、臭い足が洗えた以外、やっぱり、服のままは、気持ち悪いな。」
と、その時だった。
「えっ!?何!?口?牙あ?!」
水中から、何かが出て来た。
「ぎゃあああ!」
大きな、鰐だった。
「鰐…ク、クロ…コ……ダイ………ル……うげっ。うぐ……。」
言い終わるか終わらないかの内に、鰐の必殺デスロールは終わり、悠子は鰐の餌食となってしまった。悠子の革靴の片方だけが、下流まで流されて行く。他は全部、鰐に食べられてしまった。水面は、そこだけ血で赤く染まっていた。

「えっ?悲鳴?」
と、美智は走り疲れて立ち止まっていた。
「悠子の声?まさか、そんな!?でも、引き返せば、あの男が……。」
するとその時だった。
「ウゥーーッ……。」
「えっ!?嘘!?狼?でも、狼は、確か、牛とかの家畜は襲っても、人間は襲わない筈だわ。日本の狼は、明治時代に絶滅して、まだ存在するのは、ヨーロッパの……。」
 向こうの森の奥からそろそろ出て来たのは、三匹の狼だった。三匹ともよだれを垂らしながら、美智を睨み付けている。
「一応、気を付けなきゃ。そうだ。イヌ科なら、鼻が効くわね。じゃあ……」
美智は、紺色のハイソックスを右足片方だけ脱いだ。そして、北東にいる狼達とは正反対の、南西に向かって投げた。そして、再び走った。
 狼は、三匹ともく美智の脱いだ靴下の所へ行き、匂いを嗅いだり、口にくわえたりsちて遊んでいるように見えた。この隙に、美智は必死で走って逃げていた。
「一時しのぎかも、だけど、方向を変えて、隠れ…うわっ!」
美智は、木の根っこに引っ掛かって転んでしまった。
「ウオーーン!」
「そんな!いやあ!私、おいしくないから、やめてちょうだい!人肉は、まずいのよ!」
「ガルルル!」
「ウウウ!」
「うぎゃあああ!痛い!やめて!お腹が!足があ!顔が!」
美智は、狼に、腹部や胴体、足や顔などをかじられている。
「痛い痛い!誰か助けてちょうだい!私には、エンジニアになる夢が!ノーベル賞を取るのも夢なの!だから、食べないで!バチ当たるわよ!ぐぎゃあああ!」
 美智は、三匹の狼達の御馳走となり、残された髪の毛と、ズタボロに破かれた服と、割れた眼鏡と、靴と靴下以外は、ほぼ血と骨だけになってしまった。
 そして、腹が膨れた狼達は、森の奥へと消えて行った。
 そこに来た、あの男、そう、サカキは言った。
「あらら。やっちゃったね。そう言えば、ずっと前だったかな。以前に僕を殺した若いカップルは、狼の餌食にしちゃったから、それで人間の肉の味や血の味を覚えたんだ。それで、人間も襲うようになったみたいだね。残念。御愁傷様。」
 そして、サカキは、美智の亡骸から目を逸らし、その場を離れるように、ゆっくり歩き出した。

「ここは、崖だわ!下は。海。つまり、行き止まりね。あれ、香里?」
「崇子。」
崇子とばったりあったのは、泣いている香里だった。
「香里。まだ泣いてるの?泣いても仕様がないじゃない。泣いても余計にお腹が空くだけよ。」
「うん。」
「それにしても、やっぱりこの島は、そんなに広くはないみたいね。そうだ!あの男は?!サカキは?!」
「あ!」
と香里は右手を口に当てた。
「え?」
「やあやあ。そこにいたんだね。」
「サカキよ!逃げよう!イカダを探すのよ。」
崇子と香里は、向こうへ向いて懸命に走った。
「え!そんな!」
次こそ、本当の行き止まりだった。ここは既に、岬であった。道が狭く、この先は、断崖絶壁だ。落ちれば深い海だ。
「やあ。残念だったね。さて、俺も疲れたから、ちょっとお酒飲むね。そう、これ、アルコール九十パーセントだから。」
真っ白い、「酒」と書いた、壺のような器かわ、サカキは酒をラッパ飲みをしている。そして、ライターに火を点けた。
「……。」
「……。」
「ハアアアッ!!」
 サカキは、何をするかと思えば、口から火を噴いたのだった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
 この時だった。香里は足を滑らせ、崖から転げ落ちた。少し尖った岩の先に、香里は掴まっている。
「香里!」
「いや。助けて。」
 香里は、今にも崖から落ちそうだった。
「下を見たら、目がくらむから、見ないようにね!香里!」
「下にも、僕のペットがいるよ。」
「下?海?あのヒレみたいなのが見えるのは……もしや……鮫!?三匹、いや、四匹はいるわ!香里!落ちちゃ駄目よ!私の手に掴まって!」
崇子は、手を差し伸べようとした、その時だった。
「きゃ!」
 尖っていた岩が、割れてしまったのだった。
「香里――っ!!」
「きゃああああああ!!」
と、香里は海へと真っ逆さまだった。
 すぐに、鮫達が、海に落ちた香里の所まで泳いで来る。
「うぐっ!」
香里は、水中に引きずり込まれた。
「う、きゃああああああ!!」
「香里!そんな!香里!」
香里は、鮫の餌食となってしまった。海面に浮かんできたのは、二足の、香里のストラップ付ローファーと、ずたずたに引き裂かれた、靴下と服だけだった。
「やあ。言っておくけど、後は君一人だけだからね、崇子ちゃん?」
「そんな…そんな…。」
 サカキは、にやけている。
 ここで、崇子は暫く立ち竦んでいた。そして、地面に膝をついて、土下座をした。
「お願い!許して!まだ、死にたくない。私、あなたには、とても申し訳無かったと思ってる。」
 命乞いだ。
「顔を上げていいよ。」
「えっ?」
崇子は、言われた通り、顔を上げた。
「崇子君。俺は、実は、……。」
「実は?」
「実は、俺は、人間じゃないんだ。」
「ええっ!?」
「俺は、そう、人間の姿をした、妖怪だ。」
「えええっ!?そうなの?」
「ああ。それもな、この平成日本で言う、酒呑童子みたいなものかな。多くの、日本人の男の、ある価値観や思惑が強まってから、その考えを持つ、人間の男達の心が生み出した、妖怪だ。そう、不死身な妖怪人間なんだよ。分からないだろうがな、事実、そうなんだ。」
「妖怪?日本人男性の、ある心が生み出した?妖怪……!?」
崇子は、目を大きくして、両手で口を覆った。
「まあ、向こうでじっくり、訳を話そうか。向こうに小さな洞穴があるから。君が一度、俺を殺したのは、まあ、一つの自己防衛としてだから、ここは、……許そう。」