光と風と時の部屋

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歴史教師と時空の落とし穴」14

「歴史教師と時空の落とし穴」14

「わらわは女王卑弥呼と申す。見ての通りじゃが、ここの主じゃ。ほう。おぬしは迷い人か。顔立ちは美しいが、おぬしの着物が少しばかり泥で汚れておるな。」
(着物……。あ、そうか。この時代だもんね。背広やスーツなんて言葉さえも知らない時代ね。でも古墳時代も素晴らしいわね。少なくとも平成時代の人達よりは皆、立派かも。私の時代の日本人なんて皆平和ボケ、幸福ボケしまくりだし。)
「さておくが、おぬし。何度見てもわらわに劣らぬぐらい美しいのお。さて。こんばんはここで泊りなされ。客用の着物があるが、着替えなくてよいのか?」
「はい。また後程で結構です。でも服の汚れは拭き取りますので。(ああーあ、綺麗な着物かあ。ちょっとは着てみたいなあ。でもぉ、今じゃ無理よね。)」
「そうかそうか。では下の者に紙を用意するぞえ。表には井戸がある。そちらでは顔などもしかと拭くとええぞ。」
「は、はい。有難う御座います。あ、いえあの……。か、忝(かたじけ)のう御座いまする。」
(やった。やっぱり泊めて下さるのね。矢張り卑弥呼様って御優しいのね。ここは紫式部様と似ているかしら。ええきっと。だからこうしてこの邪馬台国の女王様が勤まるのだわ。ドイツの独裁者ヒットラーや、白雪姫やシンデレラに出て来る継母(ままはは)なんかとは違うんだわ。それも当然よね。)
 暦は、またも客室らしい広間に案内され、そこで休む事になった。
(やっぱりずっと緊張してるから身も心も疲れるの早いなあ。眠れるだけでも幸せね。すうぅ……すうぅ……。)

 誰かに叩き起こされた時には、もう表は静かで暗かった。
(夜中…………?で、誰?)
「ひいい!」
 軽く悲鳴を上げていたのは、あの外にいた右側の門番だった。
「あら。どうなさったのかしら??」
と暦は目を大きくする。
「大変じゃ、娘。卑弥呼様が、いつもより多く御酒を呑まれたようで、悪酔いされておりまする!それで貴女様を追い出し、いや、貴女を海へ投げ込むとか仰っておりまする。…あ、あ、あ、あ、あ。卑弥呼様!どうか、御静まりなさいませ!御許しを!」
「ええい!ひっく。黙れいぃぃ!うう、ひっく。」
「はっ…………。そんな。」
と暦は青ざめる。
 顔を真っ赤にした卑弥呼は、ナイフ…いや、包丁…いや、小刀を持って般若顔でこちらまで迫って来るのだ。
「いつも御優しい卑弥呼様が!飲酒によって御人が御変わりになられるとは稀な事です!」
「門番のおぬしなんじゃな。そんな小生意気で薄汚いドブネズミのような小娘を、美しいわらわの、こんな美しい屋敷へと襲うなどと初めにほざきおったのは!ああ歯痒い!許しておけぬ!二人共、死ねえ!死ねえ!そして海の藻屑となるが良いわ!ひっひっひ。」
(そんな!卑弥呼様って、酒癖がこんなに酷くなるの?それとも、隠していた本心を曝け出す際に、御酒でそれを誤魔化そうと…………?ああ、このままじゃ私達二人共やられちゃう!あ、せめてこの人だけでも助けたい!よし。)
「女王卑弥呼様!」
暦は不意に立ち上がると、卑弥呼に向かって叫んだ。両手を伸ばし、両手とも握り拳だ。
「んん?なんじゃ?小娘。ひっく、ひっく。」
「あのう、悪いのはこの人じゃなくて、私で御座います!卑弥呼様!だから、私はどうなっても構いません!殺すのであればどうかこの私を殺して下さい!この殿方だけは、助けてあげて下さい!」
 暦はこう言うと、その門番を両手で抱きかかえるようにしながら庇う。またゆっくりと腰を下ろした。
「ふっ。そうかえ。ならばそうしようかのう。門番の命は助けてやる。御前を葬り去ってやる!覚悟は良いか!じゃが、矢張りな、この門番にも仕置きはせねばなるまいな。門番の方は百叩きと減給じゃ!ふっふっ!」
「そんな!もおお、やめてよ!この、この、このオニババアアアアアアアア!羅刹女(らせつじょ)!山姥!いかれミミズ!(滝汗)呑んだくれええーーっっ!!」
 暦はとうとう我慢出来なくなり、思い切り足で卑弥呼を蹴飛ばしたのだった。
 卑弥呼はそのまま一メートル吹っ飛び、壁に後頭部をぶつけて転倒した。卑弥呼が怯んでいる隙に、二人は走って逃げた。暦は門番の手を引いていた。
「娘よ!わしはどうなっても構わぬ!卑弥呼様が正気に戻られるまで、おぬしだけでも逃げるのじゃ!」
「そんな、なりません!貴方様は悪う御座いませんもの!」
「御人好しじゃの、矢張りそなたは、身も心も美しいのぉぉ…………。」
 二人は正面玄関で靴を履くと、取り敢えず外へと急いだ。卑弥呼の酔いが覚めるまでは、逃げ伸びる事が先決だとそう思ったのだ。
「待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!逃がさぬ!!ういぃぃっっ……。」
卑弥呼様が追って来ますぞ!逃げなされ!」
「駄目!一緒に逃げるの!私が食い止めるから、貴方が逃げて下さい!さあ!」
と暦はまたも門番に言うのだった。
 その時、何かが現れた。
「娘さんよ!わしの背後に、滑稽な色をした穴が現れたぞい!」
「きゃあ本当!あららあ、私の後ろにも!」
 二つも次元の裂け目がある。二人はそれぞれ吸い込まれる。
「門番さん!大丈夫ですかああ!あ、では卑弥呼様。さようなら……うるる。」
(何とか助かったわ。井戸の水で顔とか洗えなかったのは仕方無いわよね。足もストッキングの上からでいいから、洗いたかったなあ、ああ~あ…。でも、私も門番様も無事で良かったかしら……。そうだわ!古墳時代後期に出て来た見回りの豪族らしい人の一人が、あの門番様と同一の人かしら?と言う事は、やっぱりあのまま未来へタイムスリップして転がり込んで豪族の仲間に?そうとしか考えようがないけど、どうかなあ?他人の空似とか子孫にしてはあまりにも顔が双子のようにそっくりだわね。でも私以外の人が時空間に吸い込まれるなんて、あれが初めてだわね。でも、あの門番様はきっと無事なのよね。門番様は古墳時代の前期から後期へ、かあ。あれが偶然ならあれからタイムスリップはしないのかしら。私はどんどん過去に行ってるけど。……ああ、次はどこ行くのかしらね……。)

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