光と風と時の部屋

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学習&ホラー小説「歴史教師と時空の落とし穴」13

「歴史教師と時空の落とし穴」13

 ここは、山の上のようだ。しかし、どこの山なのかは分からない。前方すぐそこには崖があり、そして振り返ると背後は森が広がっていた。
「また別の場所…。何とか助かったみたい…ね。そしてここは山中(さんちゅう)か。頂上ではないよね。でもどこかしら。日本なのは間違い無い、とは思うけれど……。あ、あれはもしや……?」
 頂上ではなくとも頂上に近いようだ。故に眺めが良い。山も多いが、山を挟めばそこには平野が広がっている。向こうの方に変わった形の物が見えたので、望遠鏡をバッグから取り出して見てみる。
「鍵穴みたいな形…あ!そうだ!あああれは、『前方後円墳』だわ!こんな所で見れるなんて!」
 そう。ここから見えたのは、広野部に広がる、前方後円墳だったのだ。古墳時代では最盛期とも呼ばれ、古墳時代中期に建てられた巨大円墳だった。
 そこで暦は、またも参考書を出して確認してみる。
前方後円墳……四世紀末から五世紀に掛けて造られた古墳。内部には竪穴式石室と横穴式石室の両方があって、副葬品は…土師器に須恵器、甲冑(かっちゅう)、剣、馬具などの武具か。それから、人や動物などの形をした、形象埴輪があった筈ね。あれは日本列島の平野部に建てられた古墳ね。現代でも有名な古墳の一つね。巨大だし。)
「ふうわああぁぁ~~。」
暦は、大きく欠伸をしながら背伸びをして、両手を思い切り上へ伸ばす。大きく手伸びをしたのだった。そしてこう思った。
(ここからの方が全体がよく見れるし、すぐ近くだとまた入りたくなって仕様が無くなっちゃいそうだし。仮にも歴史教師である私なら、つい興味津津になっちゃうしね。でも、次こそ捕まれば殺されちゃうかも知れないし…………つまり位置がここで丁度良かったかな、と。ああそれにしても、平成時代なんかよりは、ずっとずっと空気も美味しくて気持ち良いなあ。きっとまだ古墳時代に違いないわ。)
 そしてこの時、暦は他についても思い出したのだった。
 埼玉県には、稲荷山古墳があり、福岡県には岩戸山古墳がある事も。稲荷山古墳も、中期に建てられた古墳で、この頃は大和政権の勢力が東国地方にまで及んでいた。江戸船山古墳出土太刀銘文と共に、漢字の使用例の早い遺物だったと言う。岩戸山古墳の方は、後期に建てられた古墳で、五二七年、筑紫国造の磐井が大和政権の新羅征討を阻む為、古墳最大の内乱を起こした。これは「磐井の乱」と言う。石人・石馬で知られるその古墳は、その磐井の墓とされる。
 ここで暦は、勿論バッグは肩に掛けたまま、三角座りをして涼み始めた。目を瞑ってじっと耳を澄ませると、小鳥の囀(さえず)りが聞こえて来た。
「ふう、いい気持ち。さっきの荒野よりは涼しくて良いわね。古墳の内部にも負けてないかな。でも古墳の中は、涼しくても、ちょっと臭うわよね…………。」
「ウウーーッ。」
「え?」
 その時、何かが聞こえた。獣の唸り声だ。恐(おそ)る恐る背後を振り返る。
「キャッ!そんな!ただの犬…じゃないわよね…。」
 見れば、そこにいたのは、毛並みは黄土色に近い色、形は柴犬と似ていたが、身体は柴犬にしては大き過ぎると思ったのだ。でもドーベルマンやグレート・デンでもないようだ。ドーベルマン程大きくもない。しかし目付きも牙も異様に鋭く、涎を垂らしている。そしてウウー、ウウーと唸り続けているのだ。
「ウウォウウゥゥゥ…………。」
「きゃ…もしかして…狼!?…それとも、狂犬病にでも罹った野犬かしら!?ううん。これはやっぱり狼かも。きっとそうだわ。この時代は、やっぱり日本にも沢山いたのね。絶対、これは現代じゃないでしょうし…………。と、兎に角、狼とかじゃ洒落になんないわね!!」
 暦は逃げようにも、前方は崖だったので逃げようがなかった。
(もしかして、私、こんな所で食べられちゃう運命なの?!……でも食べられて死ぬのは、絶対嫌だわ!助けて。ワープ出来ないかな?嗚呼、どうしよう。後ろが狼、前が高い崖、挟み撃ちだわ。八方美人…でも何でもないそれなりの美人だけど、そんな私が、こ、こ、こんなところで八方塞がりなんて!)
「あっ!池だわ!」
見ると、崖の下にはそこそこの大きさの池があった。
「一か八か…飛び込もうかしら。そこそこ深ければ助かるかも…食われるよりマシね。」
「ウワアアオオォォゥゥーーッッ!!」
狼は突進して来た。
「エエイッッ!!」
暦は、直後に池目掛けて思いっ切り崖を飛び降りた。真っ逆様に落ちる、落ちる…………。
「やった。池に向かって真っ直ぐね。この際、びしょ濡れになっても良いわ。助かればね。」
 暦の頭部が水に触れる直前だった。またどんよりした感覚に捉われたのは。
(あら、頭の天辺ぐらいしか濡れずに済んだみたいね。良かった。ふうう。一時はどうなる事かと思ったな。)

気が付けば、今度は海岸だ!そしてすぐ傍にまた古墳だ!
(うわあ!また古墳ね!次は、ごく普通の円墳かしら?いや、ごく普通って言っても、この時代じゃ電動の機械も何も無い故、人手で造るからやっぱりとても大変よね。一つ造るのに百年は掛かってるしね。この頃は、もしかして形成期とも言われる、古墳時代の前期……かな?……じゃあ三世紀から四世紀の終わりまでよね。後程、前方後円墳も造られるわね。あ、と言う事は、…………やだあ、また過去に降りちゃったのね。)
「もう中に入るのはやめておこうかな。次こそ捕まるかも知れないし。捕まれば逃げ場は無いから、そのままワープもタイムスリップも出来なければ命の保証は無いし。それから、狼とか猛獣にも気を付けないといけないなあ。日本の狼は明治時代には滅んだけど、この時代じゃもう大昔だもんね。うようよいて可笑しくないわね、と。」
とまたぶつぶつ言ってしまうのだった。好きで声に出している訳ではないのだが。
 このまま紀元前まで遡れば、元の時代に帰れるだろうか、と暦は思ったのだった。勝手に時間旅行を楽しみつつも、不安、恐怖も釣られるように募って行くばかりだ。
(さて、参考書でも開いて、と。もう古墳の中には入らなくて良いわね。どうせ現場まで来ちゃってるし、十分よね。ここは本の資料を見て照らし合わせるだけで我慢、我慢、と。)
 参考書に書かれていた通りのようだった。近畿・瀬戸内海沿岸の円墳、竪穴式石室、副葬品は、土師器(どじき)、鏡、玉、碧玉(へきぎょく)などの呪術的宝器が共に埋葬、か。それと、円筒埴輪があるのね。
「ふう、納得、納得。と。ん?うわああああああ!!つ、津波!!と思ったら、あら!あら!また時空間――っっ!?!?でも、これまでのよりもずっと大きいわね……………………。」
津波が来たのだが、暦に向かって来る津波の表面は、波頭から下まで全体的にずっとまた可笑しな青黒い色に変わり、そのまま暦を飲み込んだ。
(やっぱり、苦しくない…ああ良かった。あの津波には、水には呑まれる訳じゃないみたい。でも、またワープ、そう、時空転移するのね。溺れるよりはマシかも。でも、今度はどこかなぁ………??余程変な所にさえ着かなければまだ良いけれど。狼や虎や熊の巣の近くじゃ絶対嫌ね。いや、そうなればもうあっと言う間に絶体絶命かも。死んじゃったらもう帰れないだろうし……。嗚呼。くわばらくわばら、だわ…………………………。)

「はああぁぁぁ……。さて、ここはどこに当たるのかしらねぇぇ……。」
 流石の暦も、そろそろ精神的にまいってしまう頃合いだろうか。暦自信がそう考えていたのだった。
 よく見れば、向こうに屋敷らしきものが見えたのだ。毎回可笑しな所に放り出されるかと思えば、必ずや目の前にオアシスがある。いつもこんなパターンだ。どんなイタズラ好きの神様はいるのだろう、と暦は思うのだった。
「御屋敷よね。まさか悪代官屋敷じゃないわよね。江戸時代でない事は確かだし。でもどうかしら?そうそう。幾ら美人で礼儀正しいから特別に泊めてくれるにしても、悪人ばかり集まった家じゃ、売り飛ばされたり、気に入られれば監禁されて家主様と強制結婚させられたりして淫らな事を毎日存分にされたり、それでもやがて飽きられたなら捨てられるか、ううん、…やっぱり売り飛ばされたりしてね………。恐いなぁ。昔は間違いなくそんな事あったと思うと、身の毛が弥立つわね。それにただでさえ今、私は、私は………もう、この状況、一体…一体…一体全体…何がどうなってるのよお!もう!ウルウル…………。」
 流石に、いつもは強気な暦も、とうとう涙が溢れた。でももうすぐ終わるかも知れないのだからとそう思えば、流すのはやめたのだ。泣いたりしても体力を消費するだけなのだから。
「まだ泣かない…泣かないわ、私…もうすぐ帰れる…私はきっと助かる…きっと。」
 そう信じて、暦は屋敷まで歩いて行く。この大昔に、分からない所をブラブラして、もし狼やら虎やら何やらの猛獣に襲われて食われたり、遭難してのたれ死ぬぐらいなら、まだ悪代官や賊の親分の妻にでもなった方が、もしくは売り飛ばされた方がそちらで幸せに暮らせる可能性も、僅かならば無くはないだろうと、そう思ったのだ。動物に捕食されるのだけは頂けない、それは一番痛くて苦しいだろうからとそう思った。死に方そのものが、人間としては最も哀れだろうと思ったりもした。こんな所で白骨になるのは嫌だった。
 何だかんだ考え巡らせるうちに、屋敷に近付いて来た。
 やっぱり門の前には門番がいた。左右にいるので二人だ。右にいる方は、あの時古墳に来た者の一人と服装はそっくり似ている。いや顔もそっくりだった、いやいや同一人物なのかも知れないが、向こうは覚えていないようだった。いやそれも違った、と暦は思った。何故ならば、時間をまた更に過去へと遡ったからだと、そう言う事になると考えたからだった。
「ん?おぬし。若き女か。見掛けない身なりと顔をしておるな。まあ良い。娘よ。ここは卑弥呼様の御屋敷だが、何用かな?もしや道にでも迷われたか?」
「え、あの……あ、はい……。道に迷ってしまいまして。」
「そうか。ならば暫しこちらで休むが良いぞ。卑弥呼様に話を付けてみるとしようぞ。」
一人の門番が言うと、もう一人の門番も、
「そうじゃ、それが良い。私からも卑弥呼様に御願いしたいものじゃ。じゃが、話は中の者がしてくれるじゃろうな。」
とこう言うのだった。
 門番が二人共いい人そうで良かったと、暦は一安心したのだった。そして、邪馬台国を創った卑弥呼様の御屋敷だと分かったのでもう一安心だ。後は、卑弥呼様がどんな方なのか、卑弥呼様は御優しいのか?それとも非常に冷たいのか?と正直心配だが、この門番の人柄次第で、大よその見当は付いた。
 ここで何やら、二人の門番はヒソヒソと放していた。暦はこう見えて地獄耳なので、殆ど丸聞こえだった。
「おい、この人、卑弥呼様にも劣らぬぐらい美しくないか?」
「そうじゃの。いやいや卑弥呼様より美しいかも知れんぞ。」
「おお、御前もそう思うか。矢張りな。そうじゃな、後は卑弥呼様が嫉妬などせねば良いのじゃが。だがあの方は常は心は御広い。きっと大丈夫じゃろう。」
「そう、じゃな。」
「ああ。」
(あらやだ。私が卑弥呼様にも負けないぐらい綺麗?なんて……照れちゃう…でもまさか、私に聞こえるようにわざと言ってる?なんて思っちゃったり…。でも卑弥呼様がそんな私に嫉妬するかどうか、かあ。それは一つの問題かな。それで私を追い出したりするかもって?それもそうよね。さて、細かい事考えるのはもう抜きにしましょう。疲れてるしね。)
 そして門が開く。右側の門番は屋敷の玄関へと向かい、暫くして帰って来た。
「正面口の門番にも事情は放したら納得してくれたぞ。他、中の者も皆おぬしの事を大歓迎じゃと申しておる。おぬし。さあ入るが良い。」
と右側の門番。
「はい。有難う御座います。いえあの、忝(かたじけ)のう御座います。では御邪魔します。(きゃあ嬉しい!大歓迎だなんて!)」
「遠慮はいらん。さあ堂々と入るが良いぞ。後は挨拶さえ忘れなければ大丈夫じゃて。中の者と問題を起こす事は無いじゃろう。ではごゆっくりと。この邪馬台国を治める女王卑弥呼様には粗相のないようにな。」
と左側の門番は言う。
 そして暦は脚を揃えて御辞儀をすると、門を潜って屋敷の中へと入る。
「おお、美しい迷い人とはおぬしの事か。伺った通りじゃな。」
「そうじゃ、そうじゃ。さあ通るが良い。」
と正面の扉が開く。
「はい。では失礼致します。(うわあ、やっぱり、門番が男の人だからかも。門番が女だと、それこそ女の私は、僻まれたり怪しまれて追い出される可能性が高かったかも。うふふっ。)」

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