光と風と時の部屋

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学習&ホラー小説『歴史教師と時空の落とし穴』12

「歴史教師と時空の落とし穴」12

「ハッッ!!」
 目を開けるとそこには、紫式部の姿が。そしてここは、さっきの座敷の客間となる大部屋だ。暦にはすぐに分かった。
「起きたのか。おお大変じゃな。汗を搔いておるぞ。風邪を引かぬようにな。それにしてもそち、随分とうなされておったが、大丈夫だったか?暦殿……。」
「式部様。すみません。私……。(ああ良かった。やっぱり夢だった。でも、これもまた夢だったら?随分と深い夢になるのかしら?まあ兎に角良かったかも。)」
「食事にでもするかえ?」
「はい。」
 暦は起きると、身体は大分楽になっていた。
「よう三時間も眠っておったのう。時折うなされておったがな。しかも、オオシオ何たらだの、ヒラガゲンダイあの、セン、センノ何たらだのと、聞いた事も無い者の名も挙げておっったような?わらわらはそのような名は聞いた事ないがのう。おほほ。まあ良い。さて。もう楽になったか?では、食事を運んで来るとしよう。もう少し休んでおって良いぞ。」
 バッグの中を見てみると、やっぱりパンプスもあった。何も無くなってはいなかったので暦は安心したのだった。
(良かった。パンプスも他の持ち物も、全部ちゃんとある。ふう。)

「ゆっくりと召し上がるが良いぞ。」
「はい。有難く頂きます。式部様。大変感謝致します。この御恩は一生忘れません。」
茶碗一杯の米や、味噌汁の他、おかずは、これは鯛の刺身か。
(これが平安時代の貴族の御食事ね。この場で食べられるなんて。)
 暦は、尚も感激していた。最早、暦の目は宝石の如し、だろうか。
(美味しい!江戸時代で御団子食べたっきり、大分時間経ってたものね!食べて帰れると良いんだけど、でも、そっくり元の時代に戻れるかな…やっぱり不安……不安だけど、やっぱり美味しい…。これがまた幸せな一時になるのよね。)
「御馳走様でした。」
「(こくん。)」
と式部は微笑したまま、頷いた。
 その瞬間だった。暦が咀嚼し終えた後の事だ。食べ終えた後の御膳は、またどんよりとした形の、歪んだ裂け目のような大穴に変わった。
(ワープする時が来たのね。さようなら、式部様。御恩は一生忘れません。頑張って、「源氏物語」とかを書き上げて下さいね。では、では、…ぐすん…御機嫌よう。……ぐすん。)
「そちよ。いや、暦殿。達者でな。さらばじゃ。愛しき者よ。」
紫式部の、最後の見送る声が聞こえたような気がした。

「うわ、暑い!ここは、どこかしら……?」
 気が付くと、見渡せば広野が広がっていた。砂丘ではないようだった。だが木や草花はそう多くない。
「また時代を遡った感じ。場所も絶対違うと思う。嗚呼、急にこんな所まで飛ばされたんじゃ、さっきの涼しくて広い、式部様の屋敷に戻りたい思いね。ああーあ……。」
と額の汗を拭いながら独り言を洩らす暦だったが、でも仕様が無いと思い何となく歩き続けた。
「あ、あれは!」
 小さな円形の建物だ。
「古墳…よね。と言う事は、古墳時代!?まあ、その可能性は大と考えて良いかな!?ヘリコプターから見下ろすかもしくは、中に入れば何の古墳か分かるかも。それにどうせ私は、特別な…存在じゃないとは思うんだけど、時代を遡ってまでこんな所に来ちゃって………。勝手に侵入したら見付かれば捕まるかも。でも、どうせ時代は違うし、いずれはまたタイムスリップ…………。こんな折角なんだし。だから敢えて、中に入っちゃおうかな。ええ、そうしよう。そうするわ。『後は野となれ、山となれ。』だわ。」
 ブツブツ言いながら、暦は古墳の中に入ってみる。
「この横穴式石室は……あ!それに、この装飾壁画…って事はこれは、古墳時代後期の、『群集墳』ね!うわあ!六世紀から七世紀に掛けてだから、もう衰退期よね。副葬品は確か、……ええーーと……。あ、あったあった!(独り言みっともないけど、幽霊さんぐらいならいそうね。)須恵器、金銅製の武具、工芸装身具など。」
 取り出した参考書を広げて暦は言う。
「埴輪も、衰退しちゃって、もう無かった、と。山麓や山間部でも築造されていたそう。ふんふん。思い出したわ。」
 その時だ。外から何やら駆け足の音が聞こえる。
「えっ?」
「むむむ!何者だ!侵入者、いや盗人か?!コソ泥か?!近頃、どうも話題になっていたと思えば!矢張りそうであったか!……おい!こそ泥だ!いたぞ!見付けたぞ!」
「なぬ!?」
この男は、槍を持っていた。全体をどう見ても、この時代の格好には思えない。警備にでも来たのだろうか?
すると、もう一人の男が出て来た。
「ムッ!?泥棒なら、容赦はせぬぞ!皆の者、ひっ捕らえよ!!」
「おおうっ!!」
「コソ泥は、許しておけねえな。くっくっ。もう逃げられんぞ!」
すると暦は急いで参考書をバッグの中へしまうと、甲高い声で叫んだ。
「きゃああ!いえ、違います、違います!私は、私は……。(ああ、どうしよう。このままじゃ、捕まっちゃうわ。)」
 二人だった男は、また増えて、三人、いや五人、いや七人もいる。向こうから副葬品の武具でも引っ張り出して対抗でも、と考え付かなくはなかったが、相手は、屈強で俊敏そうな男が七人もいる。暦も体力、腕力にはまあまあ自信があるのだが、この数では流石に太刀打ち出来そうにない……。
「すみません!ちょっと遺跡の調査に来ていただけなので!」
すると一人目の男は、
「嘘を付け!近頃は、そのような大嘘をぬかして逃げ出そうとする輩がおって困るのじゃ!さあ来い!」
「へっへっ。それによ、その身なりはなんだ?一目見て怪しい着物だぜ。な。ん?」
ともう一人の男は槍を肩に掛けるように持ちながら暦を睨み付ける。
(いやあ、もう終わりかしら?ううん。そんな事はないわ……。またワープ出来るわよ。きっと出来る。)
 暦は、駄目もとながらも、古墳の内部の奥の方まで走って行った。
「ええいっ!このっ!」
と棺らしい物を思いっ切り開けて見る。
「きゃっ!ミ、ミ、ミイラ!?」
包帯で巻かれた何者かがそこにいた。葬られた豪族か誰かだろう。
 その時、何かが響いた。「ここに御入りなされ。」と呼び掛けて来るようだ。
「ええ~~??入るって言っても……。」
 とその時、暦は吸い込まれるように棺の中に入って行った。
(きゃあ、穴が…。吸い込まれる…あ、良かった・ワープね。捕まるよりは良いかな。あの時代、泥棒でも重罪で、最悪は処刑にもされたりとか、だっただろうし……。ふう。)
 歪んだ空間らしいところで、暦はほっと一息付いた。

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