光と風と時の部屋

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学習&ホラー小説「歴史教師と時空の落とし穴」4

「歴史教師と時空の落とし穴」4

 ここは、映画村なのか。いや違った。雰囲気で分かる。自分と似た現代大臣の服装の者が一人もいないし、異様に広い街並みだ。ここは間違いなく、本当の江戸時代に来てしまったと、暦はすぐに分かった。そして蒸し暑い真昼間のようだった。季節は夏真っ盛りだろうか?そこまではまだ分からない。向こうから何か聞こえる。
「御用だ、御用だああ!!」
「待て!待てーーい!」
手に持った提灯をぶら提げたまま走って行く二人の御用役人が見えた。
 江戸時代と言えば、…………。
 江戸幕府の機構として、一六○三年に征夷大将軍に任ぜられた徳川家康が江戸に幕府を
開いた。徳川家康に会えるのだろうか、と暦は思った。歴史上の人物の中では、暦が惚
れている人物の一人ではあったが、既に現代にはいない。その為、ここでは会えたらいい
なとちょっぴり胸がキュンと鳴ったようだった。中央機構では、最高職の大老は常置では
なく、蠟中が政務統括者だった。地方機構では、京都所司代と言う、朝廷や西国大名を監
察する者があった。
 この時代、大名(だいみょう)は一万石以上の領地を与えられた者で、一万石以下は直参(じきさん)と言い、また旗本(はたもと)・御家人(ごけにん)とも言う。
 ところでここは江戸と言っても西暦何年なのだろうか、と暦は思った。
 一六一五年には徳川家康が秀忠の名で出した元和令(げんなれい)(十三条)が最初で、将軍の代替わりごとに発布されたのが「武家諸法度」と言うものだった。
 取り敢えず歩いてみる事にした。城の近くまで来たところで、またノイズみたいなザザッと言う音が響き、周りにはノイズの砂嵐みたいなものが現れて暦はそれに包まれた。

気が付くと、ここは城の廊下のようだった。きっと徳川家康の城の中ね、と暦は思ったが、正直不安だった。ただでさえ自分はどう言う状況にいるのか分からなかったのだから。
木製の床で廊下にいたが、パンプスは勿論履いたままだったので、土足ではいけないなと思い、暦は一先ずパンプスを脱いだ。脱いだパンプスを持ったまま、ゆっくりと廊下を歩いて行くコンクリート程ではないが、木製の床、フローリングでも結構滑る。それに、暦はストッキングを穿いているので、素足よりは余計に滑ってしまうだろう。
暦は、歩きながら自分のパンプスの中の匂いをそっと嗅いでみる。
(やだ。パンプスの中も、もうこんなに臭~~い。学校では上履きとして三年ぐらいは穿いてたけど、こんなに緊張したから汗ばんだのね。)
 暦は思った。脚はどうだろうと思い、奥の部屋に来たところで部屋の前で一度座り、右足の裏を鼻に当てがって嗅いでみる。
(うわ、案の定だ!酸(す)っぱ臭――い!)
 これまでに嗅いだ自分の足の裏の臭いの中では、特に臭かったようで、暦は顔をしかめる。早く帰って足もストッキングも洗いたい、そしてこのパンプスもそろそろ穿き替えたい、と暦はそう思った。綺麗な顔と体型に似合わず、暦は他の人より結構汗を搔く方だった。多汗症かも知れないから今度診て貰おうかとも思っていた。
 暦は部屋に入る勇気は出なかったので、障子をそっと小指と破り、覗いてみる。
 何と、御家老らしい男の家来と、玉座のような所に座って話しているのは、徳川家康だった。確かにあれは家康だ。ついに会えたと暦は会心の笑みを洩らしそうだった。後は御話が出来れば、と思った。でもそれは難しいかも知れない、と思った。
そう言えば「一六(ヒーロー)○三(オッサン)・徳川家康」とか御笑いコントで言っていた芸人がいたのを暦は思い出したが、自分の好きな男の事をオッサンだなんて呼びたくはない、とこう思った。
 その時だった。一人の家来の男が歩いて来た。
「むむ!何奴!曲者(くせもの)か!出あえ!出あえーーっ!」
「きゃあ、そんな…………。」
しょっ引かれるのではと思い、暦はパンプスをショルダーバッグの中へ急いで詰めると、咄嗟に障子を開けてその部屋に駆け込んだ。
「ん?おぬしは誰じゃ?」
「曲者か。」
と御家老は言う。
「まあまあまあ。おぬし、名は何と申す?何処からは入ったのじゃ?」
「いえあの、気が付いたらここに。」
「そうか、何を言っておるのかはよく分からんが、盗人ではない事は確かか。」
「はい。神様、仏様に誓います。」
「ふむふむ……。ううーーん……。」
 数人の家来が「曲者め!!」と言って戸を開けた途端、暦はまたワープした。

気が付くと、また城下町のような場所に戻っている。まだ昼間で、江戸時代のままのようだが、かと言ってさっきと同じ日付とも限らない。暦はそう思った。
パンプスを バッグから取り出して、また履く。
その後の江戸時代については、幕政の改革(一七○九~一六年)と言うものがある。これは五代将軍綱吉が文治政策を進めたが、側用人柳座和吉保の独断政治、奢侈な生活などにより幕府財政は窮乏した。六代家宣・七代家継の時、朱子学者である新井白石が登用され、正徳の治と呼ばれる改革を行なった。そう言えば綱吉は、「生類憐みの令」と言う法令も作っていた。特に犬好きであった綱吉は、犬を大事にしていたのだった。犬を叩いたり振り払ったりしただけでも、島流しか打ち首の刑になったりなど、あんな無茶苦茶な法律があるかと、暦も生徒も授業の時に言っていた。犬に腕などに噛みついた時も、犬が自ら離れるまでじっとそのまま待っていなければならず、払い除けたならその時点で虐待の罪となり、罰せられてしまうのだと言う。そんな法律だったのだ。
教師用の教科書を取り出して、頭の中で色々描きつつ復習しながら、暦は歩いて行った。
「さて、どうしようかな、と…………。」
そしてふと暦は思った。要するに、良い事を一つ思い付いたのだ。
(そうだ!折角こんなに違う時間と言うか、非常に離れた過去にやって来てるんだし。この本物の江戸の町を観光しちゃおかなあ。ええ、それがいいわ。またタイムスリップしちゃう前に、御団子の一つでも頂いちゃおうっと。決――めた!)
 つい前よりもテンションの上がった暦は、足を速めて歩き出す。そして少し走った。
先ずは団子屋こと茶店と言うところを探してみる。すぐに見付かる筈だ、と暦は思った。勿論、映画村へは言った事がある。小学校時代の修学旅行で一回、大学時代には同じ大学にいた彼氏と一回。大学の卒業旅行では大学の友達同士でまた行った。合計三回行った。その彼氏と言う人とは、二年ぐらい付き合っていた元彼であり、もう今は付き合ってはいない。色々あって別れたのだが、一応メル友同士として相談相手同士でもある関係ではあった。
「あ、団子屋さん……じゃなくて……茶店だ。見付けた。ふふふ。」
茶店」と言う黒い文字が、戸の上に飾られた看板には大きく、行書でしっかり書かれていたし、食べている御客が一人、二人といたので分かったのだ。店に入る前に、暦ははっとなって思った。
(本当の江戸時代?の、本物の御団子や抹茶??が食べられるかと思うと嬉しいけど、いつまた裂け目が現れるかは分からないのよね。食べる直前に消えちゃうととても悔しいし、食べた直後、御金を払わないのは食い逃げね。どちらも嫌だなあ。)
暦は山無が、悩んでいるうちに店に行って団子とか注文出来る、とこう考えた。
(御金はちゃんとあるけど、私の時代のこの御金で通じるかなあ?小判でないと駄目かしら?御店の人に聞いてみようっと。)
こう考えながらも、急いで店の中へ入る。そして金庫の置かれた机の後ろに立った店主らしい小柄な中年の男に話し掛ける。
「あのう………御団子一つと、抹茶を一杯…いえ、御団子一皿(ひとさら)と、抹茶を御点前(おてまえ)(御手前)拝見させて頂きます。」
と暦は注文する。
すると店主の男はこちらを見て目を大きくした。
「はい、いらっしゃいませ。………ん!?おや!?これはこれは、見掛けない顔ですね…。その服も珍しい。綺麗な御方ですね。外国の方ですか?アメリカ?イギリス?」
「いえ、あの……私……(ここは嘘言っちゃおうか。子の人、悪い人じゃなさそうだし。)母親の方がアメリカ人なんです。でも顔は父に見てます。今日は、母の御下がりの服を貰ってそれを着てるんですぅ。(これで大丈夫かな?何とか誤魔化せたかしら?勿論、私の両親は立派な日本人だけど。)」
店主の男はみるみる頬を赤らめた。
「御客様。そなたは、美人で淑女。貴女ほど素敵な女性は、久し振りです。二十年ぶりでしょうか。どうど、どうぞ、今日ばかりは、御勘定なんて要りませんから、好きなだけ食べて行って下さいませぇぇ。はい。」
と店主はもじもじして両手を擦り合わせる。鼻の下を伸ばしてしまっている。

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