光と風と時の部屋

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小説(サイコホラー)『平成・酒呑童子』④

「平成・酒呑童子」4

「え?あの男に会ったの!?」
週明けの、一時間目が終わった後の休み時間だった。美智は、物理学の本から顔を上げて崇子に問い直す。
「そうなの!間違い無かった。」
「何だか、変な現象ね。あの人、普通の人間かな?非科学的だわ。何もしないのに生き返るなんて。クローン技術で蘇らせても、また赤ん坊から始まるし、等身大のままで記憶もそのままだなんて……。」
「どうしよう。」
「とにかく、このまま様子を見るしか無さそうね。」
「うん。そうだね。」
 後で、この土曜日の出来事を、崇子は、悠子と香里にも話した。
「そんな!本当に!?ヤバくない!?それ。」
と悠子。
「本当だよ。神に誓うわ。」
「そうなんだ。怖いね。」
と香里は少し震えている。
「取り敢えず、用心しておこうね。」
「そうね。」
「うん。」

 翌日の午後だった。あの、崇子達に埋められた男は、路地裏をぶらついていた。中学生の男子から金を巻き上げて去ろうとするチンピラを見て、その男は、チンピラの腹部目掛けて、思い切り傘を突き刺した。そして傘を広げる。血しぶきが飛んだ途端、中年のチンピラは、呻き声を上げて倒れた。
 他の場所では、数人の女子高生達が、学校をサボって道端に座り込んではしゃいでいた。その女子高生達を並ばせて、鉄の棒で思い切り順番に尻を叩いて行く。
「ふん。相変わらず、不届き者が多い世の中だな。」
男は言う。
 そして、夜には、コンビニの駐車場に屯(たむろ)していた暴走族達が走り出したところ、男は路上の真ん中に立ち塞がり、暴走族達の前に出た。
「何だ、てめえは!?危ねえじゃねえか!」
「やんのか!?」
すると男は黙ったまま、木刀を差し出し、十数人の暴走族達を薙ぎ倒して行った。
 そして最後に、アルコール濃度の高い酒を口に含むと、棒の先に点けた火に向かって思い切り吐き出し、その吹いた炎で、暴走族達を焼き払った。

 朝、美智は、パンを齧りながら、朝刊を読んでいた。“正体不明の何者かに、チンピラや暴走族が殺される”とあった。
「正体不明の何者か?目撃者はいないのかしら?いても、あれから捜索しても姿は見当たらない?何者か、分からないまま?そんな…。これもまた非科学的ね。」
と、美智は、ブラックコーヒーを飲みながら言う。

「お早う。ねえ、悠子。今朝の新聞見た?」
美智は問う。
「私は見てない。だって、殆ど新聞読まないし、ニュースだってあまり見ないから。」
「崇子は?」
「うん。タイトルと見出しなら見たよ。あれ、変よね。」
「そうでしょ。チンピラとか暴走族とか、柄の悪い人ばかりが、やられてるのよ。」
「正義の味方と言っても、殺すのはやり過ぎだよね。」
「崇子。アンタが言う?」
と悠子は突っ込む。
「それより、ここ最近、不自然で気味の悪い事ばかり起こるね。」
「うん。」
「まあねえ。」

 休み時間、美智は考えていた。
(私、やっぱり疲れてるのかな?まるで夢を見ているみたい……。)
崇子も考えていた。
(まさか、ね。死んだ筈のあの人が、生き返るなんて……。殺してしまった私に、そして美智や香里、悠子までもが死体遺棄の共犯なら、私達に復讐を仕掛けて来るかも?でもどうかな?取り敢えず、用心しないと……。)

 下校時間だった。崇子が自分の靴箱を開けた時だった。
(ん?紙切れだわ。何か書いてある……?)

『借りは必ず返すよ?崇子ちゃん達?』

(え!?)
それは脅迫状のようだった。崇子は、絶句した。他の三人には話せずにそのまま帰った。
 そして、出来るだけ人通りの多い道を通って下校したのだった。
商店街を崇子が通り過ぎた途端、建物の隙間には人影があった。そう、あの男が崇子の事を見ていたのだ。崇子はそれに気付いていなかった。
「ただいま。」
 崇子は、帰るとそのまま部屋に閉じ籠ったきり、夕飯の時間になっても出て来なかった。

「ふう。」
香里は、帰ると洗面所で顔を洗い、靴下を脱いで洗濯機の中に入れた。そして、自分の部屋に戻った。
(そんな…私、共犯になるなんて、やだよ……。)
 香里は、自分の部屋に行くと、気を紛らわそうと、読み掛けの少女小説を読み始めた。
 食欲が出なかったので、香里は、本を読み終えると、そのままベッドに潜り込み、寝てしまった。