光と風と時の部屋

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小説(サイコホラー)『平成・酒呑童子』③

「平成・酒呑童子」3

あれから一週間余りが過ぎた。もう十月の上旬である。ニュースや新聞を観ても、まだあの件では警察が動いた様子は無かった。崇子達は、少し安心していた。
「今日もお疲れ。じゃあね。」
「うん。バイバイ、崇子。」
と、先に帰る崇子に、悠子も軽く手を振る。
 崇子は、下校途中に、スーパーに寄っていた。通学用の靴下を新しく買うためだった。スーパーを出て、自転車に乗ろうとした時だった。
(ん?何か、見覚えが…いや、まさかね。)
あの時、自分が殺してしまったあの男と、身長も体型も、顔もそっくりに思えたのだ。その男は、マスクと帽子を着けていた。男は、スーパーへと入って行く。
(あの男は、確かに、死んだ筈だわ。まさか、死んだ者が生き返るなんて事、……。他人のそら似よね、きっと…。)
マスク等を着けているにせよ、まるで、あの男と、目はそっくりだったので、一瞬、崇子は血の気が引いた。
(まさか、双子の兄弟だとか?ううーん……。)
自転車を漕ぎながら、崇子はそう考えた。

「え?あの人にそっくりにな人に会った?」
「そうなのよ。マスクと帽子をしてたから、はっきりとは分からないけど。」
美智が問うと、崇子は、ポテトフライを齧りながら、答えた。
「そう、目は似てたんだ。」
美智は、コーヒーを啜りながら言った。
「じゃあ、双子かもね。ね、香里もそう思わない。」
と笑いながら悠子は言う。
「うん。思う。」
 金曜日の夕方。この後、カラオケに行く予定なので、ファミレスで軽く腹ごしらえをしている。良い声を出すには、腹八分目が丁度良いと、雑学の本で読んだと言う話を、美智が皆にしたからである。
「それにしても美智はやっぱり物知りね。」
「そんな…私なんてまだまだ『井の中の蛙』よ。」
悠子の褒め言葉に、美智は微笑しつつ、はほんの少し照れたように言う。
「だって、美智は勉強が出来て頭の回転が良い他には、雑学にも詳しいじゃない。私なんて、この間、数学と英語が赤点で、超ヤバかったもん。そう言えば、香里も、数学が赤点だったよね?」
「うん。数学は、私にとってはやっぱり難しいな。」
と香里はゆっくりめの口調で、戸惑いながら答える。
「香里と私は仲間よね。勉強が出来ない同士、親友になれそう。ふふ。」
「変な仲間作りはしなくて良いから、二人とも、もっとしっかり勉強した方がいいよ。将来困るよ?」
と美智は諭す。
「まあ、いいのいいの。美智は頑張って、エンジニアにでも何にでもなってよ。私と香里は、専業主婦志望だし。ねえ、香里。」
「うん。でも、私は、出来れば絵本作家になりたいな。」
「いい夢だね。でも、それだけじゃ食べていけない人が多いから、やっぱり、いい旦那さんを見付けようね。香里。」
「いきなり専業主婦なんて、虫が良過ぎるよ。最初は、結婚相手を見付けるまでは、女もOLとして普通に働く、それが普通だよ。学生結婚は、なかなか難しいよ。」
と、崇子が突っ込む。
「崇子の言う通りよ。」
と美智。
「分かってる。受かる大学や短大、そして受かる会社に入ればいいし。ねえ、香里。」
「う、うん。」
「悠子。あんた、能天気ね。」
「まあ、能天気な私と、無邪気な香里は、何気に気が合うよね。」
「ふう。」
美智は、呆れたように頭を抱えながら、溜息をつく。

 カラオケボックスにて、四人は盛り上がっていた。
「恋する、フォーチュンクッキー♪未来は、そんな悪くないよお♪ヘイ、ヘイ、ヘイ……♪」
崇子と悠子は、マイク片手に踊りながら、AKBの「恋するフォーチュンクッキー」を歌っている。美智は次に歌う曲を選ぶため、機器をピコピコ操作している。香里は、微笑みながら二人の踊りを見ながらゆっくり手拍子をしている。
「香里は何歌うの?」
を美智は聞く。
「私は、古いのしかあまり知らなくて…キロロの『未来へ』とか『長い間』とか。」
「そうなんだ。私は、中島みゆきの『糸』にしたよ。」
「渋いんだね。」
「へえ、中島みゆきの『糸』かあ。美智の十八番?」
と、マイクのまま悠子は美智に聞く。
「まあ、そうなるかな。」
「縦の糸は、あなた~♪横の糸は私~♪…………♪」
「いよっ!生かすう~~!」
拍手をしながら悠子は言う。
「次は何歌おうか?悠子。」
と崇子。
「そうだねえ。次はAKB以外にしようかな。」
「それにしても、暑くなってきたなあ。ルーズソックス脱いでいい?」
「悠子、あんたが脱ぐと素足から臭いが来るのよ。それなら、最初から普通の靴下穿いて来たら?」
と美智。
「だって、ルーズ気に入ってるんだもん。」
「休日も私服で穿いてて、よく飽きないね。」
「まあねえ♪」
と、早速、悠子はルーズソックスを脱ぎ始める。
「うっ…悠子…今日も強烈ね。」
と崇子。
「やれやれ。」
と美智。
「脱いだ後は、スウスウして、気持ちいいなあ。ねえ香里、あんたも、こう言う場所なら、暑ければ、靴や靴下、脱いでもいいのよ。遠慮しなくていいからね。」
「うん。でも、私…足がちょっと…。」
「え?何?女の子らしい香里まで、もしかして足が臭い?嘘お!だったら意外ね。ねえ、どんな匂い?」
「やめなよ。」
と美智。
「うん。卵が腐ったみたいな……。」
「へえ、マジ!?」
「香里。何もそんな、正直に言わなくても…。」
と崇子は言う。
 美智と崇子の二人は、まるで呆れ顔だ。香里は、はにかんでいる。
「ねえ、ちょっと嗅いでいい?」
「うん。別にいいよ。」
と、香里はストラップ付きのローファーを脱ぐ。
「はい、失礼…クンクン…。ウェッ、本当だ。凄い。やっぱり、香里と私、気が合う仲間かも。あはは。」
「ふう。全く。」
と美智は尚も呆れた顔だ。
「汗と垢なんだから、しょうがないっしょ。足なんて、誰でも臭いって。」
と崇子はフォローする。
「私だって、納豆みたいな匂いよ。」
と崇子。
「崇子、一々言わなくていいの!」
と美智は諭す。
「そう言う美智は、どんな匂いなの?」
を悠子は言う。
「何だっていいじゃない。」
と苦笑しながら美智は言う。
「へえ、どんな足の匂い?」
「ふう。仕方ないな。一番臭い時で、納豆雑巾よ!」
「へええ!それじゃまるで、AKBの川栄みたいだね。」
と悠子。
「悠子。あんたはバラエティの見過ぎよ。あんなの、ただの作りネタかも知れないじゃない。」
と崇子は言う。
「そうかなあ。まあどっち道、本当の事は分からないからどうでも良いけどね。あはは。」
と悠子は笑う。

「じゃあ、また明日ね。」
「うん。今日も楽しかったよ。じゃあ。」
「お疲れ様。そりゃ悠子、あんたなら一番楽しかったでしょうよ。いつもながら一番盛り上がってたのは悠子なんだし。」
と美智。
「まあね~!ねえ、香里。あんたも気を付けて帰ってね。」
「うん。」
そして四人は別れた。
「ふう、そこのコンビニ、寄って行こうかな。」
カラオケ店の隣のコンビニへ行こうとした時だった。
「やあ、崇子ちゃん。久し振り。」
「え?」
後ろで声がしたが、振り向くと誰もいなかった。
「何?何か、聞き覚えが…。」
崇子は、君が悪くなったので、コンビニには寄らずに、そそくさと自転車に乗り、帰路についた。
「崇子、お帰り。」
「うん。ただいま。」
「崇子、どうしたの?」
「何でもないよ。」
 崇子は、部屋に戻ると、ベッドに座って靴下を脱ぎ、両手で頭を抱え込んだ。
「まさか…あの人は、確かに……死んだし…焼いたし…いない筈よね。」
 この夜、崇子は少し悪夢にうなされた。鬼のような姿をした怪人に、連れ去られる夢だった。妖怪伝説によれば、酒呑童子と言う妖怪が、若い娘をさらって、大江山にこもっていたところ、金太郎こと坂田金次に退治されたという伝説だった。酒呑童子とは、モテモテだったが女性に興味が無く、幾人もの女性から告白されるも断り続け、女性達の怨念のガスを浴びて、鬼の姿をしたような妖怪と化してしまったと言うものだ。
(まさか、あいつが……。)
 土曜日であったこの日、崇子は、今日はデパートに自分用の服を買いに出掛けていた。デパートの駐車場前に来た時だった。
「はっ!」
あの男がいたのだ。ラブホの個室で死んで、無人島まで行って焼いて埋めた筈の、あの男そのものだった。
「やあ、崇子ちゃん。久し振り。」
「え?そんな?」
「そんなに驚くなよ。」
と言って、男は白ワインを、この真っ昼間からラッパ飲みしている。
 崇子は、目をこすってもう一度見ると、やはり、そこにその男が立っている。服装も、あの時と全く一緒だ。
「じゃあ、また会おうね。」
と男は去って行く。
「………嘘でしょ。」
崇子は、呆然と暫くそこに立ち竦(すく)んでいた。