光と風と時の部屋

どうも、こんにちは。m(__)m(^^)/四国在住の多趣味人です。中でも主な趣味は、読書や創作、運動、筋トレ、書道、カラオケ、音楽鑑賞等です。「健康オタク」ともよく言われます。こちらでは、日記や随筆やポエムやイラストの掲載、お勧めのグルメ紹介、時にハウトゥー記事やトレンド記事、また様々な役立つ商品の紹介等を行なって行きたいと思います。極力の極力で、皆様にとって、愉快で楽しめる且つ、為になる記事を書いて行けるよう、努力致します。どうか宜しくお願い致します。

小説(サイコホラー)『平成・酒呑童子』②

「平成・酒呑童子」2

 崇子は、死んだ男を連れてラブホの部屋を出る。男の首に手持ちの包帯を巻き、ロープで自分の足首と男の足首を結んで二人三脚で男を運ぶ。
携帯で、悠子と美智と香里を呼ぶ。
崇子は、車の免許も持っており、自家用車も、一年半バイトで貯めた小遣いで購入した。崇子は、男を自分の車の荷台に乗せ、三人を後部座席へ乗せる。
「ちょっと、崇子。ホントにヤバいよ?どうするの?」
「…………。」
悠子が問うも、崇子は答えない。
「ねえ、崇子。一体、どこへ行くの?」
「海よ。」
美智が問うと、崇子は答える。
「海って、あの?」
「毎年、私達が海水浴に行っていた、あのT海岸より、もう少し南の方ね。」
「他にも、何やら、色々な物を助手席や荷台に積んでるわね。崇子。大工道具みたいなの入ってない?」
「その内、分かるわよ。着いたらね。」
と崇子は振り向かないまま言う。
「…。」
香里は、両手を膝の上に乗せたまま、じっと黙っている。

 漸く、海に着くと、崇子は大工道具を取り出す。海岸の南側には。小さな森林が広がっている。崇子は、鋸を三本取り出す。
「悠子、木を斬るの、手伝ってくれない?ある物を作るから。」
「ある物?」
「筏よ。」
「筏?!」
と三人は驚いて言う。
「大きな筏を作るの。ほら、向こうに見えるの、人の住んでいない離れ小島よ。船の旅行の時に、両親が教えてくれたわ。ねえ美智。あんた、某国立理系のK大学志望で、一番、理数系に強いんだよね?後で、寸法を測りながら斬った木を削ってくれる?」
「え?う、うん。」
「この大工道具は、御爺ちゃんが使っていたのを持って来たの。御爺ちゃんは腕のいい大工さんだったから、昔は工作とか教えて貰っていたわ。」

 やっと、筏が完成すると、四人は男を乗せて筏へと乗り込む。
「行くわよ。いいわね。」
と崇子。
相変わらずの制服姿の四人は、筏を漕いで沖へ出る。
「あの離れ小島まで、意外と距離あるわね。でも、流石は美智ね。美智が計算してくれたからよ、この筏がこんなに動くのは。美智って、天才じゃない?あ、崇子も、だけど。」
悠子は感心して言う。
「いや、何もそこまで。で、あの島へ行って、この男を、どうするの?まさか……。」
「うん…。ごめんね…。」
崇子と美智の、力のある二人が主体で筏を漕ぎつつ話している。悠子と香里の二人は後ろであくまで補助する形態だ。

「着いたわ。」
「広くて静かね。やっぱり、無人島?」
「そうよ。さあ……。」
「崇子。本当に、やるの?」
悠子は言う。
「そうするしかないじゃない。」
「崇子。本当はあんただけの自己責任なのよ。私達は……。」
と美智は砂浜の地面を見下げながら崇子の方を向いて言う。
「分かってる。さあ、あちらの林の方で、穴を掘るわよ。シャベルは二つしかないから、誰か手伝って。」
と用意していたシャベルを持ったまま崇子は皆に言う。
「じゃあ私が手伝うわ。」
と美智が言う。
 四人は、浜辺を少し離れた林へと向かう。ゴツゴツした岩石は疎(まば)らで、草木が生い茂っている。
 崇子と美智はせっせと穴を掘り始める。二人が黙々と掘っている間、悠子は携帯をいじり、香里は両手を後ろに組んで水平線を眺めている。
「これぐらいの幅と深さなら十分ね。さあ、ここは四人全員手伝って!」
 穴を掘り終えると、四人で男を抱えて、掘った穴の中に入れる。
「はい、美智、マッチ。」
崇子は、美智へもう一箱のマッチを渡すと、二人で擦って火を付ける。そして穴の中へ擦ったマッチを次々と投げ入れる。
「なかなか、燃えないわね。」
「人肉は殆ど脂だから、まあじきに燃えるとは思うんだけど、服についても、すぐ消えちゃうな。」
「うん。あ、そうだ!ねえ悠子、あんた、ルーズソックスの予備持ってたよね。今、穿いてるのを脱いでこっちへ貸してくれない?」
「キーッ!酷い、私が脂足だからって…まあ、いいわよ…脱いで渡せばいいんでしょ!」
と悠子はルーズソックスを脱ぐ。そして穴の中に投げ入れる。
「あら、丁度、男の鼻のところよ。あの世で匂い嗅いでるんじゃない?ごめんね。悠子。後で必ず弁償するから。」
「別にいいよ!靴下ぐらい!」
「ふう、漸く燃えたわ。」
「凄い臭いだね。」
と香里は両手で鼻を押さえながら言う。
「うっ!やっぱり、死体を燃やす時の臭いは半端無いね。こんな臭いなんだ。」
「悠子、あんた葬式の時に焼き場へ行かなかったの?」
「うん。正月の時に祖母が亡くなったから、忙しい正月のバイトを優先して焼き場まではついて行かずに帰っちゃったのよ。」
「ふーん。」
「燃やし終わったら、勿論、埋めるよね?」
「勿論。」
死体遺棄ね。私達、共犯にならないのかな?」
と悠子。
 この時、崇子の目付きが変わった。崇子と悠子と美智は三人で何やらコソコソ相談している。
「ねえ、ここだけの話なんだけどさ。」
「何?何?」
…………。
「崇子、それ、本気?」
「崇子。あんたって、……鬼ね……。」

「もしばれたらの話だけどね、…………  
香 里 に  自 首 さ せ な い?」

無人島と言うこんな閉鎖空間の中では、何が目覚めるか分からないものね。」
と美智。
「どうしたの?みんな。」
と香里は片手を口元に宛がって言う。
「ううん、何でもないのよ。香里。気にしないでね。」
何が、気にしないでね、だ、と美智は心の中で思う。
「よし、もう少しね。」
シャベルを片手に、額の汗を拭きながら、崇子は言う。
「うん。いやあ、それにしても、蒸し暑いね。」
と悠子。
燃やした遺体を埋めているのは、崇子と悠子だ。
「よし。終わった。帰ろうか。」
「うん。ふう、疲れた。崇子、皆にジュース奢ってくれるよね?」
「分かってるよ。当事者は私だし。」
悠子が言うと、崇子はそう答える。
 午後七時半。崇子は、家に帰ると、脱衣室で靴下を脱ぎ、洗濯機の中に入れる。そして二階の自分の部屋に戻る。ベッドにうつ伏せになる。
「ふう…やっちゃった…あれで大丈夫かなあ……?」
崇子は、やはり、内心は、心配だったのだ。警察に知られなければ良いが、現代の警察は優秀だから、もしもの事があったらどうしようと思ったのだった。

 美智は、自室にて、第一の志望大学に向けて、勉強中だ。表情は平然としているが、崇子の事がやはり心配であった。
(崇子、とうとうやっちゃったね。大丈夫かな?)
 センター試験の数学の、計算式を書くのを途中で止めて、美智はふとそう考えた。美智は、Tシャツとジーンズに着替え、靴下はそのままである。勉強中なので、眼鏡を掛けている。授業中も、美智は眼鏡を掛ける。

「ふう。崇子……警察だよ…早く逃げなよ…すやすや。」
悠子は、自室で、着替えずに、掛け布団の上でそのまま眠っている。今日の事が気になっているから眠りは浅く、夢を見ているようだ。
「悠子――っ!晩御飯よ!」
部屋の外から母親の呼ぶ声がする。
「う…ん。分かった…行く。」

 香里は、部屋で宿題の残りをしていた。自室でブラウスと膝丈スカートに着替えており、靴下は学校のをそのまま穿いている。
 宿題が終わると、香里は、一階に降りてキッチンでエプロンを掛け、卵焼きを作り、ご飯をついで、麦茶を入れ、一人で夕食を食べる。
(崇子、大丈夫かなあ。心配だよ。)
静かな台所で、卵焼きを食べながら、香里は思った。